手のひらのお星さま・前編


手のひらのお星さま

 トコちゃんは、今日も手のひらを見ています。
このところ気がつくといつも手のひらを見ているようです。
朝起きると、すぐに手のひらを見ます。
ごはんの途中でも、手のひらを見ます。
「トコちゃん、早く食べなさい」
「はーい」
幼稚園に行くバスの中でも、お歌の時間でも、お昼寝の時間でも、
手のひらばかり見ています。

「トコちゃん、どうして、手のひらばかり見ているの?」
洋子先生が聞いてきました。
「あのね、お星さまが光るの待ってるの」
トコちゃんは、嬉しそうに笑いながらそう答えました。
「お星さま?夜、空に出るお星さま?」
「うん」
トコちゃんは、またワクワクしながら手のひらを見つめ始めました。
洋子先生には、何のことだか、さっぱりです。

それは、この前の日曜日、ママと一緒にデパートへ買い物に出かけた帰り道のことでした。
夕方の街並みは、お店の看板やネオンの灯りでとてもきれいに輝いていました。
「ママ、きれいだね」
「そうね」
ママもトコちゃんも、何がきれいなのか、聞かなくてもわかっているようでした。
空は、夕焼けの赤い色が少しづつ濃くなっていきました。
「ねぇママ。あれ、なーに?」
トコちゃんが、街の輝きの中のひとつの灯りを指差して言いました。
そのには「占」と書かれた提灯みたいな物を机に置いている、帽子と着物を着た人がちょこんと座っていました。
「ああ、あれはね、易者さんって言って、占いをしてくれる人なのよ」
「占いって?」
「そうだなー。未来のことを予想してくれるの。例えば、トコちゃん、アナタは大きくなったらきれいなお嫁さんになれます。とかね」
「わー、未来が見えちゃうんだ」
「そうかもね」
「すごい。すごいね。ね、どうして?」
「さあ、どうしてかな」
トコちゃんは不思議でたまりません。
「どうして。すごいね」
トコちゃんは易者さんをじっと見ながら、何回かそうつぶやきました。すると易者さんもトコちゃんに気付いて、ニコッと返してくれました。
「わあ」トコちゃんはまた嬉しくなりました。
とても不思議な易者さん。とてもすごい易者さん。
トコちゃんにはもう易者さんしか見えませんでした。
「ねえ…。」
トコちゃんが何か言いかけた時に、ママは少し離れてたところにいました。
「トコちゃん。もう行くよー」
「あーん、待ってよー」
トコちゃんは、ママに駆け寄りいつものようにママの手を取りました。
そして、もう一度易者さんを見て、小さくてを振りました。



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